申酉天中殺は、大変な働き者で、なんといっても、身体がよく動く人です。たとえば、申酉天中殺ならこたつに入って、ただ、ジッとテレビを観ているといったことは出来ず、テレビを観ながら、口も動かす、手も身体も動かす‥雑誌や新聞をみたり、切り抜いたり、ついでに片付けて整理してしまう。結局、テレビは半分も観ないでせかせかと動いている。仕事の仕方にしても、一つのことを根気よく、コツコツと続けていくとか、ジッと一つのことに粘り抜くということはしません。一度にアレもコレもやりたがるし、また、それができる行動力を持っています。たとえば、女優さんなどでも、女優としての才能もすぐれているうえに、家庭ではちゃんと立派に主婦も努め、家庭と仕事を両立させている――こういうことが難なくできるのが申酉天中殺です。一人、二役でも三役でもこなせるわけです。ですから、申酉天中殺生まれが事業家になると、A社、B社,C社‥と、ちがう業種の会社を何社も持つことができるのです。

六つの天中殺の星のうちでも、パワーは大変にある方です。パワーナンバーワンが寅卯天中殺とすれば、第二番目は申酉天中殺の星だといっていいでしょう。こうした現実世界の行動力は政治家、実業家、芸能界‥どんな分野でも活躍できるパワーでもあります。申酉天中殺には、環境の変化に合わせていく力があります。その時々の環境や状況にすばやく頭を切り替えることができ、対応できるのです。株価が上がったら売り、下がったら買うといったような対応の速さはたいしたものです。たしかに、一種の“要領のよさ”もついています。申酉天中殺は学校時代には必ずしも成績がいいとは限りません。しかし、世の中へ出ると、この世渡りのうまさ、世間の風向きに対する感覚や行動力で、とたんに生き生きと力を発揮します。申酉天中殺の子供は、頭で覚えるというのではなく、身体で覚えるような覚え方が得意です。語学の学校へ行ったら成績はひどく悪かったのに、外国に二、三ヶ月滞在したらとたんに喋れるようになった‥というように。また、申酉天中殺は非常に財産に恵まれる傾向もあります。財産の恵まれ方にも二つあり、一つは、自分自身で、家とか土地とか財産を持てる場合。もう一つは、財産を持つ子供を育てることができる場合です。自分自身で財産を残さなくても、子供が残すことになる。そして、子供縁が薄ければ自分が財産家になっていく――そういうように、申酉天中殺の持つ“財運”は、自分と子供の間でシーソーのように移動します。

申酉天中殺は休息をとろう、楽をしようとは考えず、働ける間は自分で働こうというような気質の人が多いのです。静かなムードを必要とする戌亥天中殺や子丑天中殺の子供からみると、申酉天中殺の母親に対してはどうしても反抗的になってしまいます。この天中殺の母親というのは、すべての行動がマイペースなので子供には反抗される可能性が強いのです。申酉天中殺は、家系も継ぐし、伝統も大切にするし、親の面倒もみるという具合に、古風なくらい、目上を大切にする面があります。ですから、申酉天中殺の女性には嫁姑の関係も割といい人がいます。夫婦関係においては、お互いが自分の世界を持っていて、自分のすべき事は自分がやる、そして互いに干渉しない、という夫婦関係でない場合は、破局を迎えることになるでしょう。

■申酉天中殺の幸運・衰運のサイクル

申酉天中殺のもつ運のパワーは大きく、運の伸び方も大きいのですが、揺れもまた大きいというのは、実は、この天中殺以外のところにとんでもない落ち込みがあることと無関係ではありません。この独特のカーブを、私たちは「中落ち運」と呼んでいます。申酉天中殺の天中殺現象は、天中殺に入ったとたんに、吹き出すように一気に押し寄せるのが一つの特徴です。人に欺かれて大金を損した、裏切りや盗難に遭う、人との死別、別離、争い‥‥天中殺の怖い現象はほとんど申年に集中します。「これが2年間も続くのか‥‥」と、思わずため息が出そうな申年に比べ、同じ天中殺でも次の酉年は案外穏やかに経過するのも申酉天中殺の現象です。気持ちの上での揺れ、不安定なものはありますが、現象的には申年に比べたら穏やかなものです。こうして、静かに天中殺を抜けられるのかというと、それが違います。申酉天中殺のサイクルでは天中殺あけに非常に大きな変動が待っています。つまり、二綋期の戌年、亥年に入ったとたん、大きな揺れに出会います。「今年は天中殺があけるぞ」と期待していた気持ちに、とたんに水を浴びせられるような運の沈下と言ってよいでしょう。特に戌年の現象は、「身辺の変化、ものの難あり」です。職が変わったり、会社は同じでも部署が変わったり、それも何だか慣れにくかったり、仕事がやりにくいような内容のところへ変わっていく‥‥というように、職業の環境が変わりやすく、住居の変化も起こりやすいのです。そして、「離」の現象というのは、家庭から子供が独立していくとか、友人関係が変わっていくということもあります。青少年なら、親元を離れていったりします。また、若い恋人同士が、天中殺があけたら結婚だ‥‥というようなところで、何となく別れることになってしまうのが戌年の現象です。しかし、この一見“不運”の連続に見える変動はこのあと亥年、子年、丑年とずっと上がっていくので、そのジャンプのために一回大きく沈み込むといった形なのです。亥年へ入ると、戌年でおきた変動現象が、「やっぱり変わってよかったんだ」というプラスの方向へ好転していきます。「恋人と別れて、つらかったけれど、それはもっと素晴らしい出会いのための別れだったんだ」と実感するようなことが起こってくるのです。次の三綋期、子年、丑年は亥年の勢いでそのまま運が伸びる時期です。何事も順調に進むと思ってよいでしょう。二綋期の後半から三綋期へかけての申酉天中殺の運の特色は「経済力と人脈」です。特に、子年では経済的な力が非常についてきます。収入の増加とか、あるいは将来的に財につながるようなもの、不動産などの大きな財産が手に入る時期。土地とか株へ投資したいというようなときは、この時期を狙って動くと効果が大きいのです。人脈という面では、ねどし、丑年、どちらも広がっていきますが、特に、丑年によい現象が現れます。丑年に知り合った人たちは、後年何らかの形で、自分の運勢を引き上げてくれるようになります。こうして、ぐんぐん運が上昇しながら最高運の六綋期、寅年、卯年の時期を迎えます。運気はさらに上昇し、力をつけて、向かうところ敵なしの勢いになるでしょう。六綋期の現象は、夢が形になって現れることです。それと同時に、この時期、大勢の人と共にあって幸せを得ることになります。だいたい、政治家とか事業家に向いたパワーをもつ申酉天中殺は壮大な夢を持っているものです。それが、寅年に入ってくると、夢は夢として、まず、地に足のついた生き方を考えるようになり、自分の人生をどう築くかをよく考えた上で夢を持つようになります。この時期は、一種の社会奉仕的運動、名誉職の運が動いてくるのです。出世とか金銭とは全く関係がないのですが、町会の世話役、同窓会の幹事、壮年期の人なら何かのグループの名誉会長的な役回り。小中学生の子供でもクラス委員になったり、主婦でもクラス会やPTAの役職を引き受けたりするという、一種の名誉職で、大勢を率いていくような力がこの時期、発揮されます。寅年にそういう仕事を頼まれたら、快く引き受けた方がいいのです。必ず、卯年に「やっておいてよかった」ということになるのです。この「大衆の中にあってプラス」という意味は選挙に出たりすると、申酉天中殺の政治家なら大変によい結果が出るわけです。次に、五綋期、辰年、巳年の「中落ち運」がきます。卯年後半から辰年、巳年と落ち込みます。事業家なら、大損失を被るとか、新しいことを始めると、必ず空しくなるというような、天中殺とほぼ同じ災厄現象になります。また、この時期は「何か生活を変えたい」という気分が強くなってくるときですが、変化は全て危険です。引越し、転職、結婚、婚約などの動きを起こすと、今まで、ぐーんと伸びてきた運の軌道から一時に外れてしまいかねない危険期なのです。辰年の特徴は「自分に不利」な現象が現れること。恋人に裏切られるとか、信用していた取引先がつぶれる、ずっと仕えてきた上司が転勤‥‥というようなマイナスが多く出てきます。これに対して、巳年の方は同じ落ち込みでも、「誘惑に乗って、穴に落ちる」かたち。人に勧められて、つい買ってしまった株で失敗したりします。子供時代なら、周囲の友人に誘われて“いじめ”仲間に加わったり、不良仲間に入っていくのが巳年。若い女性が妻子ある男性に惹かれたり、主婦が不倫に走るというようなことが多くおきるのも、五綋期の現象です。健康の問題はあまりなく、あくまで「他人の誘いに乗って人生が狂っていく」現象ですから、頑固に自分を守ることが何より大事。この「中落ち運」は申酉天中殺独特の運気で、いまだかって、表に現れたことのないものでした。人のペースに巻き込まれず、自分のペースを守って、ここを上手に切り抜けていけば、申酉天中殺は大きな運のエネルギーを維持して、他人には真似のできない大きなことができるのです。なぜなら、次の四綋期、午年と未年でまた運勢がぐんと伸びるからです。前期で人に裏切られたり、欺かれたりという不信感や失敗があるので、ここで運の上昇にあわせて、一気に取り返そうという気が動いてきます。また、そうすることで、金銭的にも、仕事上でも回復してきます。午年はそのため、大変に「多忙」で、体力と勝負になるくらいです。とにかく午年には申酉天中殺は休む暇なく働くことになります。また、働くだけの成果も出るときです。次の未年は「人生、悠々たり。忙中の閑」という天中殺の秘法が告げるとおりに、午年でフルに働いた見返りに、非常にゆとりのあるときになります。のんびりと落ち着いたムード、特に、精神的に落ち着いてくるので判断にも過ちの少ないときです。趣味を楽しむような状況も出てきます。この余裕ある心を持って、次の天中殺の身の処し方をゆっくり考えることができれば最高です。そういう意味では、天中殺突入の1年前に、この“悠々たる時間”を与えられている申酉天中殺は幸運と言っていいでしょう。中落ち運という独特のカーブをもった申酉天中殺が、天中殺のサイクルを100%活用するためには、まず、亥年から卯年まで5年間も続く幸運期に新しい仕事や転職などを目指せば失敗はありません。天中殺の2年間も含め、戌年までの3年間は、次の飛躍に向けて想を練る時期で、どれだけのアイデアや心の準備ができるかどうかで、次の天中殺サイクルを大きく成功に導くことができるかどうかが決定されます。